瞬間 レイVer.5


『やべっ!!』


マミヤの刺すような視線にどうにか笑いを押さえると、
涙を浮かべつつ、レイは彼女に身体を向けた。


「ここまで言ってるんだ。なにかは知らんが、こいつらの根性に免じて
少しやったらどうだ。」

全部とは言わんがな、

とまだ苦しそうに笑いをこらえながらマミヤに提案する。



そんなマミヤはというと、レイの目を見据えたまままだ固まっている。
その表情はなんとも形容しがたく、何か不思議なものを見るかのように呆然としていた。


「なにを呆けている」



レイが言おうとしたその時。



マミヤはレイから目をそらし、顔をそむけ、無言になってしまった。
そして徐々にマミヤの華奢な肩が震えだし、今やそれは全身に広がった。



『やりすぎたか?』
『マミヤさんが切れるっ!』
『ど、どうしよう』

レイが笑いを完全におさめ、
バットが身体を硬直させ、
リンがなんとかフォローをしようと、


三人に緊張が走ったその瞬間。







ふふふふふふ...。あははははは...。
マミヤからも笑い声が漏れた。


本当に楽しそうな、心からの笑顔。

いつも厳しい表情を浮かべている彼女が笑っていた。その笑顔はとても綺麗で・・・。
敵に対する挑発的な笑みではなく、普段子供たちと接するときの優しい微笑でなく。
もっと純粋な、子供のような笑顔。



ああ、あんな風に笑うこともあるんだな。

初めてみるだろう彼女の笑顔に、レイは瞬間目を奪われた。



普段は決して見れぬマミヤの笑顔にうれしくなってリンも一緒になって笑った。
バットも少しバツがわるそうにしていたが、へへへ、と舌をだして笑い出した。
レイも、再びゆっくりと微笑んだ。




その後、村はずれの人通りのないその場所に、しばらくの間笑い声がたえなかった・・・





 

続く