瞬間 マミヤVer.3
   


声をたどっていくと、何人かの姿が。
バットにリンちゃん。
そして…?

もう一人の人物の存在を確認したとき、
逃げ出しそうになった自分をかろうじて抑えた。



「私が何ですって?」
出来るだけ冷静さを保ちつつ彼らの会話に入る。

内心では

クールだ。マミヤ、常にクールであれ!

と呟きつつ。




それにしても、何故このメンバーがこんな場所に。


状況は分からないが、バツの悪そうなバットの顔をみてピンと来た。

「もしかして、と思ったけど。やっぱり食料庫にもぐりこむ気でいたのね。」




・・・あぁ、もひとつ、懸案事項があったわね。この子(バット)の件が…。




それは今朝の出来事。
隣町との交易が復活したことを知ったバットは、マミヤにある食材をたかってきた。

かなりの熱心さをもって、自分にくいついたバットに
きっぱりと自分は、Noといったはず。だが。

『まだ諦めてなかったのね…』




頭を抑えながらバットを軽くにらむ。
リンはおろおろとしている。
「ち、違うのよ、マミヤさん。バットはただ...。」
「ただ...、なあに?」
二人が沈黙する。再度ため息をつく。

頭が痛くなってきた。
今は忘れよう、考えまいとしたあの出来事がフラッシュバックする。


「確かに子供たちに充分な食べ物を渡さず、飢えさせておくなんて・・・。
指導者として失格だわ。でもこの前の牙一族の襲撃で村はまだ回復していない。
それに将来、またあんな野党が襲ってこないとも限らない。だから…」

「だからって、あんなにたくさんあるじゃんか。少しくらいいいじゃねえかよ。
このケチ、いけず!」
時を置かせずバットが反論する。

『だからって、何故にアレをそんなに欲しがるの!!』

ますます頭が痛くなる。その場を即効ダッシュで離れたかった。



その時思わぬ人物からのフォローの言葉が。


「バット、いい加減にしろ。なぜお前がそんなに固執するのは知らんが、
このご時世、食料を蓄えていくのは当然のこと。
お前にもわかるだろう。なぜそんなにマミヤにかみつく。」

有難いレイの言葉に驚きつつもひとまず感謝する。 

見るとバットは黙り込んでいる。


『諦めたかな?』とほっと息を吐いた瞬間。



「・・・ただ。ただ俺はペルを立派な漢(おとこ)にしたいんだよ...」



バットの沈痛な叫びがマミヤの鼓膜を打った。






続く