瞬間 マミヤVer.2
何故マミヤがレイをここまで問題視しているか、
それは今までの彼の行動が原因である。
村に来たばかりのリンを水浴びに誘ったこと。
(初対面にも関わらず)
彼は自分達のいる浴場に侵入したのだ。
警告に耳を貸さず、武器(殺人ヨーヨー)を真っ二つにし、
彼女の抵抗もいとも簡単に抑えた彼は、
身体を覆うタオルをひっぺがえし、自分の裸を舐めまわすように見つめたのだ。
かろうじて精一杯の冷静を装っていたが、実は内心パニックだった。
あの時牙一族の強襲を知らせる声が届かなかったら。
自分はどうなっていたのだろうと考えると空恐ろしい。
それだけではない。
彼は更に屋外で自分の服を切り刻むという暴挙をしでかしたのだ。
ほとんど裸の自分にケープを被せてくれたと思いきや、
次の瞬間、そのケープを(冷酷にも)持ち去り背を向けたその後姿に、
怒りよりも呆然としたものだ。
かなり乱暴な方法だが、女の身で戦いに赴く自分を止めようとした
彼なりの優しさ(?)ということで、(頑張って)百歩譲ってみよう。
しかし、あの後ケンが布を持ってきてくれたから良いものの、
あのままだったら自分は一体どうすればよかったというのだ!!!
その後牙意一族を倒しに行く旅程のなか、
マミヤがレイから出来るだけ距離を保っていたことは致し方ないことであろう。
レイはレイなりに今まで色々あったことは解る。
両親を殺され最愛の妹を奪われ、長い放浪の末
荒んでいったとしても不思議ではない。
しかもこの度の戦いでは、ケンと共に村を脅威から救ってくれた恩人の一人である。
本当に感謝している、有難いとおもっている。
が!
だからといって彼の今までの行動が許せるわけではないのだ。
そのレイがここにいる。ケンシロウが去ったこの村に。
アイリと再会し、すっかり厄が落ちたように優しい表情になったレイ。
しかし油断は出来ない。何しろ相手は前科もちなのだ。
しかも腕力では完全にかなわない。
本気で襲ってきたら、この村でレイを止められる者などいない。
自分の貞操に危機を覚えながら、この数日を過ごしていた。
「はあ、」
思わずため息が漏れた。
壁は直せる、物資の調達もOKだ。
実際数日前から隣町との交易が再スタートし、医薬品、食料といった物資が
どんどんと入ってきている。
徐々に回復しつつある村の事とは逆に、
突破口の糸口さえ見えないこの問題にマミヤは数日頭を悩ませていた。
「どうしてこんな(つまらない)ことで思い悩まなければいけないの…」
村はずれをぶらぶらとしながら、段々情けなくなってきたその時。
なにか言い争っている声が聞こえた。