喜劇と悲劇
それは相反するもの。
それは同一なるもの。

ある一つの事象がおこっても
周囲にとっては笑い事だが、
当事者にとっては笑い事ですまないことがあるのだ

(Nojika語録3章 足の小指強打したら笑われたよ、コンチクショーより)




白衣の悪魔現る! Vol.1


美味しいシチュエーションだ。

先の戦闘で負った傷はまだ塞がっていなかったし、
出血による倦怠感は否めない。
幾重にも巻かれた包帯は、もはやその役割を果たさず、
この身体を朱色に染めるのみ。
背中の傷が寝台に当たり、グジグジとした痛みを訴えるが、
かといって身体を起こすのも億劫なほど。

どう見ても重症を負ってるレイだが、
身体とは裏腹に内心はウッキウキ死語)だった。

理由は一つ。

正面にいる、彼が唯一心を開いた愛しい女性。
マミヤ。
常の気丈な表情はどこやら、レイの身を気遣っているのか
彼女の美しい瞳は不安に揺れていた。


時は夜
場所はレイの寝室


そんな彼女と、
この狭い部屋で、
二人っきりなのだ。


美味しいシチュエーション。

年の割りにませたお邪魔虫(ガキ共)はいない
いつもは鬱陶しいほどマミヤについてまわる保護者(ジジイ)もいない
恋敵眉毛(ケンシロウ)もいない
愛する妹も先ほどマミヤと交代して今はいない


満身創痍とも言える状態で、身体を寝台に預けながら
ともすればにやけそうになる顔を必死で引き締めつつ、
このシチュエーションを作り出した野党共(既に昇天済み)に

レイは心の中で、深く、深く感謝した。

 



事の始まりは野党の強襲。
常ならば雑魚相手に遅れをとるような彼ではない。
しかし今回は状況が悪かった。

逃げ遅れたリンとバットを人質にし、己の動きを抑えようとしたのだ。

全くクズどもの考えそうなこと。

しかし友から託されたこの二人の子供を危険な目にあわせるわけもいかず、
下衆のなぶるような攻撃をただただ耐えたのだ。
その後、隙を見て野党の手から二人を救い出したレイは
修羅の如くやつらをスライスの刑に処し、溜飲を下げたのだった。



しかし受けた傷は決して軽いものではなく。
今に至るのだった。

 

「本当に大丈夫?」
揺れる瞳で俺を見るマミヤ。
「気にするな、これしきの傷、怪我のうちに入らん」

「でも傷口の消毒くらいは、お願いだから」
痛ましげにレイの傷口を確かめるマミヤ。

自分が傷を負ったわけでもないのに、悲しそうに顔をゆがめるマミヤ。
内心、こんなマミヤも萌え〜とか思っていたがここはポーカーフェイスで。

「ではすまんが、一つ頼むとするか」と答えると

「任せておいて!」
よほど安心したのか、勢い良く部屋から出て行った。



  
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