9.人が本当に助けを必要としていても、
実際に助けの手を差し伸べると攻撃されるかもしれない。
それでもなお、人を助けなさい。
People really need help but may attack you if you do help them.
Help people
anyway.
Vol 9 止り木
彼女がいた。
新しく建てられた墓の前で、
身を切るような冷たい風に晒されて。
ただ一人で。
その場に。
今までに何度そのような後姿を見ただろう。
一人で、悲しみに耐える姿を。
ほんの一年前には、彼女の周囲にはご両親がいた。
笑顔があった。幸せがあった。喜びがあった。
しかし、今は。
ご両親は冷たい土の中に。
彼女自身も深い傷を負い、未だその呪縛は彼女を苛む。
孫のように慈しみ、愛してきた彼女のそんな姿は見たくなかった。
はぁっ。
内心深いため息をつき、ゆっくりと彼女に近づく。
気配で気づいているだろうが、彼女は決して振り向くことはない。
どれほどの時が流れたか。
儂はゆっくりと口を開く。
「マミヤさん、泣いても良いのだよ」
マミヤさん、貴女一人が苦しまなくても良いのだ。
儂も村人たちも幼いコウも、皆が。
貴女を助けたいと願っている。
どうか少しでも背負った苦しみを、悲しみを、涙を
儂達に預けてくれないか・・・
一瞬、彼女の両肩が震えた。
が、
「いいえ」
「私はこの村のリーダーです。そんな私が涙を流すことは出来ません。」
「そうか・・・」
それ以上の言葉を発することなく、
儂はその場を後にした。
彼女は苦しみを、悲しみを、
他人と共有することを自分自身に許していない。
周囲がどう動こうとも、事態は変わらない。
逆に彼女にいらぬ気を使わせるだけだ。
ならば、儂が出来ることはただ一つ。
いつしか、彼女の傷がいえる日まで。
伝えよう。
泣くことすら己に許してない不器用な彼女に。
「マミヤさん、泣いても良いのですぞ。」
疲れたら、辛かったら、悲しかったら、
休めばよい。
泣けばよい。
その為に儂は何度でもこの台詞を繰り返そう。
貴女が羽根を休める止り木となれるように。