7.人は弱者をひいきにはするが、勝者の後にしかついていかない。
  それでもなお、弱者のために戦いなさい。

            People favor underdogs but follow only top dogs.
            Fight for a few underdogs anyway.


 
この選択が最良のものとは決して思っていない。

 


しかし己は選んだのだ。


部下を、家族を守るために。




Vol. 7 struggle(葛藤)




遂に彼が囚われたと聞いた。


これでレジスタンスの連中も終わりだ。
溝鼠の親方も遂にくたばるのか。
身の程も知らず、聖帝様に逆らうバカが。

下衆どもの罵声に耐えられなくなり、その場を去る。



・・・下衆・・・か。

フッ
口元を醜くゆがめながら、私は自問した。

私と奴らとどう違う?

競い合い、教え合い、拳を学んだ同胞。
その彼に与することなく、強者の庇護を求めた自分。
保身の為、聖帝の下で暴虐に加担した私。


同じだ。私は卑怯者で、裏切り者の悪党なのだ・・・。


久しぶりに捉えた彼の姿は酷いものであった。

全身から血を流し、脚の腱を断たれ、鎖で繋がれていた。
そしてその両肩にのしかかる巨大な三角形の聖碑。

なんと言うことだ。
人質の命を餌にして、
彼を聖帝十字陵の生贄とさせるつもりなのか。
同門であり、同席である南斗六聖拳ひとり、シュウを。


私の眼前で
シュウが血を流している。

共に笑い、悲しみ、苦しみ、励ましあい、支えあった友が。
今無残にも血を流し、死への道のりを進んでいる。
彼の背にのしかかるは、
捕虜の、女たちの、そして子供たちの
数多くの命。

ぐらり、とシュウの身体が揺らいだ。
飛び散る血、悲痛な悲鳴、下卑た笑い。



ああ、もうたくさんだ。我慢できない。

気がつけば、私は彼の元にと駆け上っていた。
一枚の布を手に。



予想はしていたものの、聖帝からの答えに。
がくりとひざをつく。

涙が止め処なく流れる。

すまない、シュウ。許してくれ。この無力な私を。
すまない、シュウ。許してくれ。この卑怯な私を。

サウザーの行いを悪と知りつつ、
糾弾することもせず、
お前を助けることもせず、
ただ家族と部下の身を守るためだけに、
強者(サウザー)についていったこの愚かで卑怯な私を。

お前を助けることも出来ず、
ただこうやって膝をつき、布を握り締め
涙を流すことしか出来ない私を。

すまない・・・

拳を固く握り締めた、次の瞬間。


リゾ


名を呼ばれ恐る恐る顔を上げると。


そこにはシュウの笑顔が。

有難う、リゾ。礼を言う。



シュウ。

私が選んだ道は誤りであった。
どんなに辛く、困難な道でも。
お前と共に進むべきであったのだ。

その為に南斗の道場の門を叩いたのだ。
その為に拳を学んだのだ。

弱き人々を助ける為に、支える為に、救う為に。




だがもうこれ以上道は違えない・・・・・



眼前には崩壊した十字陵。
北斗三兄弟は既に去り。
サウザーの部下どもも四方に去った。

残されたのは、私と少数の部下のみ。



「リゾ様、これから我々は・・・」


私を見つめる、顔、顔、顔・・・


彼ら一人一人の表情を見つつ、私はゆっくりと口を開いた・・・

 





Novel TOPへ

次へ