涙4 Sideレイ
なんだと?
彼女の台詞に耳を疑う。
何を言っているのだ、マミヤは?
当惑する俺に気づかず、マミヤは堰を切ったように言葉を続ける。
「あ…なたは、残りわずかな命を…。私なんかのために。
でも…私はユダに。…あの男の紋章を刻まれた女、で…。
あなたの、愛に応える資…格なんてなくて。
その上、もう…すぐに、死んで、しまう運命で…。
そん…な、明日の無い私みたいな女のために、
あなたはこんなにも苦しんで…。」
「ごめんなさい。本当にごめんなさい……。」
視線をそらし、小さく震えながら謝罪の言葉を口にするマミヤ。
「・・・・・・!!!」
なんという女だ。
己の運命よりも、死よりも、そんなことを気にかけていたというのか?
・・・マミヤ。
女としての幸せに背を向け、戦うことを、運命に抗うことを選んだ女。
己よりも他人を優先する優しい女。
細いこの身体で、リーダーとして村人を導き救ってきた強い女。
己の運命を悲しむことさえ自分に許していない、哀しいまで気丈な女。
お前は決して強くも無いのに。
お前は決して一人ではないのに。
お前が全て背負い込む必要など無いのに。
お前は誰よりも幸せになる資格を有しているのに。
嗚呼、マミヤ。
運命(さだめ)に縛られたどこまでもかなしい女。
どうやったら俺はお前を守れる?
どうやったら俺はお前を幸せにできる?
どうやったら俺はお前の心に刻まれた傷を癒せる?
耳に届くはマミヤの嗚咽と謝罪の言葉。
どうやったら俺の言葉がお前に届くのだろうか?
俺はお前と出会えて、お前を愛せて、
どんなに幸せだったかということを。
どうやったら伝えられるのだろう?
次の瞬間。
気がつけば彼女の唇に己の唇を重ねていた。
これ以上そんな彼女を見たくなくて。
これ以上彼女のそんな言葉を聞きたくなくて。
そして、
少しでもこの気持ちを伝えたくて。