「今回は私の負けだわ」と、宣言した彼女に、
Victory-!!!!!
隊長よろしく、子供たちは勝利の雄たけびを上げた。
しかし、
「でも、あれは駄目よ。代わりに干し肉と新鮮なミルクをあげるから
それで我慢しなさい!」
という台詞に再びブーイングをする。
「駄目といったら駄目!この貯蔵庫の分は栽培用として蓄えているものよ。
それにペルには干し肉とミルクのほうが断然いいわ!
代わりにもって行きなさい。特別よ!」
バットはまだぶつぶつといっていたが、
リンにたしなめられ、遂にあきらめたようだ。
その後の行動はすばやいものだった。
干し肉、ミルクだけでなく目に付くあらゆる食料を両のポケットに詰め、
そして両手にもおさめる。
どう考えてもペルだけのためではないだろう。
そうして、先ほどとはうって変わった上機嫌さで
「さすがマミヤさん、話が分かるぜー」
と言いながら意気揚々と村に戻って行った。
リンも、「もう、バットったら!」と呟きながら、レイとマミヤに軽くお辞儀をすると、
その後を慌てて追いかけていった。
マミヤは彼らの後姿を眺めていた。
全く調子のいいことだ。
しかし子犬のために彼らなりに行動を起こす、優しい子供たち。
でも子犬の餌としてにニンニクをあげるのはやりすぎだ。
そして〔ペルをつよくさせよう大作戦〕とやらも問題だ。
大○ーグ養成ギブスをペルに装着しださないうちに、一度注意する必要がある。
そんなことを考えながら、自然と微笑みが溢れて来るのを感じた。
『これが平和というものかもね・・・』
彼らの後ろ姿が見えなくなったころ、後ろのレイにゆっくり振り返る。
刹那、二人の視線がぶつかり合った。
臆することなく彼の瞳を見つめる。
さっきまでのモヤモヤはもう無い。
『さっきの彼の笑いで、これまでのことはチャラにしてあげるとしますか。』
自分の気持ちに一区切りをつけ、しかしゆっくりと一言。
「次からは許さないからね。」
『またなんかしたら、貴方の大切な妹さんにチクッてやるから…。覚悟しなさいよ。』
内心呟きつつ、マミヤはレイに微笑み軽くウインクすると、その場を立ち去った。
それがマミヤがレイに心を許した瞬間(とき)
後書き
レイバージョンとマミヤバージョンの対のブツです。
両者の観点のずれが笑えます。
「次からは許さないからね。」
レイは バットが食料ちょろまかすのに目を瞑るのはコレまでだ。と取っていますし。
マミヤは セクハラに目を瞑るのはコレまでだ。という感じで言ってます。
レイがマミヤを意識しだした瞬間、
マミヤがレイに心を許しだした瞬間は
こんな事件がきっかけだったら、と妄想してしまいました。
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