「今日は少しいいものがあるの。」

相変わらず芋以外の食材が並ぶことのない食卓。

半分白目になりながら、モシャモシャ感を耐えていたレイは。
恥ずかしそうに微笑むマミヤの台詞に凍りついた・・・。


ある食卓の光景   〜メリクリ〜



いいもの・・・だと?

無言で問いかけるレイ。

皿を片付けながら、マミヤははにかみつつ・・・。





・・・。

このパターンは・・・・・。


まずい!!!


まずい、まずい、まずい、まずい、まずい、まずい、まずい、まずい、まずい!!



愛らしい口調に。
 嬉しそうな雰囲気に。
  その微笑に。


今まで何度となく 騙されてきたことか・・・。





彼女の喜ぶ姿を見るのは嬉しい。
好きなものを俺と共有しようという彼女の気持も嬉しい。


だが、俺の脳内に展開される甘い夢と。

現実ー酒だの、きんつばだの、芋焼酎だの、蛸わさだのーとの。

ギャップがでか過ぎて・・・。

何度がっかりさせられてきたことか・・・。




「貴方もきっと気に入ると思うし。久しぶりだし。こんな季節だし」

ちょっと待っててね。と、部屋を離れようとするマミヤ。



「ま、待て!!」

悲痛なまでのレイの叫びがマミヤをとめた。


「い、いや。すまんが俺はこれから少し用事があって・・・。」

「こんな時間に?」

うっ。確かに。時計の針は11時を刺している。

だが、ここでひるんではいけない。
どうにかこの場を立ち去らないと、またがっかりすることになる。

それに。
流石に今日は・・・。

恋人たちが愛を確かめ合う、聖なる日クリスマス

そんなロマンチックな夜に、

やれ、するめだの柿ピーだの出てきたら・・・。




・・・

くっ!!!

そんなしょっぱいシチュエーションは遠慮願いたい。

その上、一升瓶が登場したら・・・。

俺もムスコもしばらく再起不能だ・・・。


如何にしても阻止せねば!!!


「そ、そう。ケンシロウ。アイツに話があってな・・・」
「ケンは帰ったじゃない。夕方に。」
うっ。

「い、いや。違った。そう。見回り。見回りだ。年末は物騒だからな・・・」
「今日の見回り当番はアサ達のグループよ。貴方は来週。」
ううっ。

「そう。そう言えば、バットたちにクリスマスプレゼントを配ろうと・・・」
「サンタの役は長老よ。前から決まってたじゃない」
うううっ。

「コウギ。コウギからマージャンの面子が足りないと誘われていてな・・・」
「奥さんの出産が近いからって、付き添ってるはずだけど」
ううううっ。

「ア、アイリが一人で寂しく泣いているのではないかと、様子を見に・・・」
「アイリさんはトキと一緒にいると思うんだけど」
ううううううっ。



アワアワしながら、脳細胞をフル回転させて言い訳を考えるレイ。
怪しい以外の何物でもないレイの行動だったが。
流石マミヤは天然だけあって、不思議そうにしているだけ。

「レイ?どうしたの、一体?」

レイの顔を覗き込むマミヤの瞳に。
一瞬白旗を振ろうかと考えたレイであったが・・・。

いや、今日だけは、今日こそは。

STOP 芋、酒、ツマミネタ!!!



「レイ・・・?」

俺を映し出すマミヤの瞳から。
いや、これから展開されるであろうしょっぱいシチュエーションから。

なんとか逃れようと・・・・・・。

レイは駆け、いや逃げ出す。
 
 すまん。マミヤ。
  心の底で深く詫びつつ・・・



「先日植えた芋の様子を見てくるっ!!!」

てんぱり過ぎて、本人も訳の分からん台詞を吐きながら。

脱兎の如く、レイはその場から逃げ出した。



「行っちゃった・・・」

開かれたままの扉から見える全力疾走するレイの後姿。

小さなため息を吐きつつ、夕食の片づけを再開する。


きっと彼なら喜んでくれると思ったのに・・・。
折角のクリスマスだし、雰囲気を出してと思ったのに・・・。

隣の寝室に目を向ける。

そこには。

数日前から用意していたモノ。


赤と緑のストライプのエロかわいい下着が







「仕方ないか。用事があるんだったら。」

どこまでも天然なマミヤさんは台所に向かう。

その頃。村はずれの菜園では。


「くそおおおおおおー」

時間を潰すべく、
一晩中イモ畑の雑草を引き抜いていたレイがいた・・・。


結局レイは年内にソレを拝むことはなく・・・。

真相が分かり、号泣するレイが見られたのは翌年のことであった・・・。

 


後書き

羹に懲りて膾を吹きまくったレイ。
考えすぎてご馳走を逃したレイ。

分かりにくいでしょうが、マミヤはマミヤなりにクリスマスの準備してたのですよ。

クリスマス前に、マミヤ、アイリ、ユリアの三人で買い物行ってたりして。
こんな会話が繰り広げられたりして・・・。
(以下妄想100%)

ユリア(以下Y)「この下着ならクリスマスっぽくてよろしいんではないですか?」
マミヤ(以下M)「えー。でも少し大胆すぎないかなあ」
アイリ(以下A)「そんなことはないわ。義姉さん。」
M「そ、そうかしら。でも恥ずかしいし・・・」
Y「よろしいんじゃない?折角のクリスマスですもの」
A「そうよ。兄さんもきっと喜ぶわよ」
Y「偶には趣向を変えてっていうのも、乙なものですわ。わたくしも購入しました」
M「って、ユリアさん。そ、ソレ」
A「ご自分で使われる気ですか?ヒョウ柄ですよ」
Y「あら、去年はトラ柄でしたがケンも喜んでましたわ。昔飼ってたペットを思い出すって」
M「ああ、そうなんだ・・・。そういう人だったんだ。ケンって。」
Y「アイリさんもどうですか、一枚。」
A「え、ええ・・・。折角ですが私はこの白で充分です。」
Y「一番オーソドックスですものね。あら、白色ならあちらにもありますわよ」
M「ちょっ。なんだか布地の面積がすごい事になってるんだけど・・・」
Y「人は時として冒険することが大切ですわよ」
M・A「「・・・・・・・・・・参りました・・・・・」」


すみません。悪乗りしすぎました・・・。




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