紅い月




深い、深い眠りから目が覚めた。
全くの闇。
何も見えない。

ただ窓から見える月が紅い光を放っていた。



美しくも、
冷く光り輝く月。
その光に、
少し震えた。

 

眠らなければ。
まだ日明けまで時間がある
明日はヤツとの決戦。俺の最期の戦い。
全てにケリをつける。
 

眠ろうとすればするほど神経が冴える
身体は疲労を感じている
休息を求めているのが分かる

しかし、
どうしても再び眠りにつくことが出来なかった。

 

目に入るは、
月光

 

落ち着かない
眠れない

 

犯しがたいまでに美しく冷たい光は、彼女を連想させる。
紅い
紅い


ただの月の筈なのに
哀しささえ感じた




思わず横に目をむけると、
月の光と同じく
そこには紅の世界が広がっていた



 

 マミヤ



美しく長い髪を広げ
自分を抱きしめたまま、
まるで子供のような安らかな表情で眠っている

愛しい人のぬくもりに
高まった精神が落ち着いてくるのを感じた

 

 


あの時。

死兆星が見えるということの意味を知り、
己が死を宣告され、
この腕の中で涙を流した彼女は。

 

俺にこう言ったのだ。

 

目さえ合わせずに、
俯きながら、泣きじゃくりながら
 
 「ごめんなさい」

と。

 

「残りわずかな命を私なんかのために。
でも私は、あの男の紋章を刻まれた女で。
そんな私なんかの為に、あなたはこんなにも苦しんで」

 

「・・・貴方の愛に応える資格なんてないのに・・・。」

 

涙を流しつつ、
何度も何度も繰り返す

ごめんなさい。本当にごめんなさい……。

 

 

そんなことは決してない。
そう伝えたかった。なんとしても。

 


しかし。

俺が彼女と出会えて、愛せて、幸せだったかということを
どんなに口にしても・・・。



 唇を、腕を、身体を通してどんなに熱を共有しても。
どんなに優しく彼女を包んでも。





「本当にいいの?私で・・・?貴方は後悔しない・・・?
こんな、こんな私で・・・。」

 

 



ああ。
その哀しい台詞に、俺はマミヤの心の傷の深さを知る。

背負った呪縛は重く、深く、鋭く・・・。
彼女を苛む・・・・・・・・。

 

 


マミヤ・・・
お前の明日は俺が守る。
お前の未来は俺が取り戻す。


あの男を必ず倒す


だから。


明日を生きてくれ。
未来を歩んでくれ。
自由になってくれ。
 

 


マミヤの髪を指に絡ませ
その身をそっと胸に寄せる

マミヤの体温を感じながら

そっと目を閉じた

 

 

月が本来の美しさを取り戻すように
二度と血のような紅い光を放たないように

 


この命、お前に捧げよう。

 

固い決意とともに








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