人生は美しい!
生きることは素晴らしい!
君はいつも病気のことばかり考えて、暗く、うつむいている。
それじゃあ、いけない。
人間には「死ぬ」ことと同じくらい、避けられないことがあるんだ。
それは「生きる」ことだよ!
チャールズ・チャップリン『ライムライト』
「耐えるのだ、何が起ころうとも。諦めるのだ。全てを。」
僕は嫌だった。嫌いだった。
この村が
大人たちが
この言葉が
周囲の大人たちはこう言う。
この世紀末、力なき我々がいかに足掻いても、運命は変えられないのだと。
長老はこう言う。
無抵抗、それが我等に残された最後の手段と。
我らが生き残る道はそれしかないのだと。
力なき者が抗ったとしても、待つのは死のみだと。
でも僕は嫌だった。
奴隷のまま生きながらえて、
無気力に日々を過ごして、
その先に何があろうというのか。
それならば、
例え死ぬとしても、
戦って死にたかった。
抗って死にたかった。
人として死にたかった。
自らの意思で精一杯生きてから死にたかった。
名句で妄想 No10 生きること、それは難しい
丸太のような太い腕に首をつかまれ、宙高く吊るし上げられるカイリ・・。
歪んだ笑顔を貼り付けたまま、小さい身体を恐怖で震わせている。
今にも泣きそうな瞳で、救いを求めるように周囲を見渡すが
誰も、そう周囲の大人も誰一人として助けようともしない。
ただ、強張った笑顔を浮かべているだけ・・・。
チクショー。
ほら、見ろよ!ニタニタ笑っててもなんも解決しないじゃねーか!!
ああ、あいつ殺されてしまうよ・・。
縋るように僕を見るカイリの瞳に動かされ。
前に一歩。
僕は足を進めようとしたのだが・・・・・。
ギラリ
たった一睨み
たった一睨みで・・・・・。
僕の足はすっかり竦んでしまった・・・・・。
「やめろ!カイリを放せ!!」
そう叫ぼうにも、舌が麻痺して動かない。
全身が硬直してしまって・・・。
怖い。
怖い怖い怖い。
今まで経験したこともないような恐怖が僕に襲いかかる。
・・・・怖い。怖いよ・・・・。
僕達は余りにも無力だ・・・。
こんなバケモノみたいなヤツ、どう足掻いても敵わない・・・・。
長老の言う通りなのかもしれない。
やっぱり僕達に残された道は唯一つなのかもしれない。
心を捨て、意思を持たず、強者に媚らって、無様に生きていく道しか・・・。
恐怖やら諦めやら情けなさやら悲しみやら・・・・
様々な感情が僕の身体を駆け抜けていく・・・・。
視線を足元に落とした僕
泣き出す子供達
顔を顰める村人達
卑屈に笑う長老
そんな僕達を見て、世紀末覇者を名乗るその男は
チッ
小さく舌打ちすると、
乱暴にカイリを放り投げ、長老へと視線を向けた・・・・・。
あれから数年後・・・。
僕はレジスタンス軍に身を寄せていた・・・。
リーダーは僕より四つ五つ年長の。バットとか言う男。
サボり、居眠り、その他諸々の悪名を被ってたけど、
戦闘が始まると別人のように勇敢に戦った。他の誰よりも・・・。
そして
その目には
何者にも屈せぬ強さと決意の光を宿していた・・・・。
レジスタンス軍に参加するといった僕に
周囲は猛反対した。
みすみす命を捨てる気かと・・・・
違う。
命を粗末にする気など毛頭ない。
ただ・・・・
今でも耳に残っている、あの言葉・・・・
「笑いと媚びに生きて何が人生だ。生きる意志なき者は畜生にも劣る。」
生きるってコトは、死ぬってコトと同じ位。
逃げられないものだから。避けられないものだから。
だったら精一杯。
自分自身の意思で
僕は生きたいんだ・・・・。
広い空。
流れる雲を眺めつつ、僕は遥か昔へと想いを馳せる・・・・。
あの世紀末覇者のことを・・・・・・・・
あの時の言葉を・・・・・・・・・
そして
あの言葉を耳にした時
僕を襲った
あの言いようもない感情の渦を・・・・・・・
全てが
未だ忘れられない・・・・。
瞼を閉じれば
思う浮かぶあの姿
彼はこの世紀末の世をどのように進んだのだろう・・・。
彼はどのようにして敵と対決したのだろう・・・。
彼は一体どのように人生を閉じたのだろう・・・・
悪いやつとは分かってても、怖い人間って知ってても
こう思わずにはいられない・・・・。
立ち上がると、頭上に広がる青い空を見上げる。
そして叫んだ。
大声で
声よ、届けとばかりに・・・・。
あんた、
すんげー
かっこよかったよ・・・・・・