O, beware, my lord, of jealousy !
It is the green-ey'd monster which doth mock
The meat it feeds on;
お気をつけ下さい、主よ、嫉妬というものに。
それは緑色の目をした怪物で、
ひとの心をなぶりものにして、餌食にするのです。
ウィリアム・シェークスピア 「オセロー」より
ああ、頭が痛い。
身近なソファーに身体を沈め、サイドテーブルに足を投げ出すと
俺はいささか乱暴に髪をかきあげた
なんとかしてこの不快な気持ちを消し去ろうと。
名句で妄想 No.9 Green-eyed monster
知っていた筈だった。
彼女の気持ちは、想いは。
俺が入り込む余地などないということは。
覚悟していた筈だった。
彼女がヤツを選ぶということは。
遥か。遥か昔から・・・。
それなのに
あんな
かくも容易く乱されてしまったこの心・・・
愛する女の幸せ
それを願わずして何が漢だ。
それを守らずして何が南斗聖拳継承者か。
だが一方で
諦めきれない感情が
断ち切れぬ想いが
俺を絶え間なく苛む・・・・
ああ。頭が痛い。ガンガンする・・・・。
頭痛は一向に治まる気配も無く
ふぅ
ひとつ深く息を吐くと、眼前に広がる光景に目を落とす
青々とした緑が広がり、花が咲き乱れ、小鳥が飛び交う春の日
穏やかで美しいこの世界・・・
だが俺の目には全てのものが灰色に映っていた
いつしか俺にも
この光景を美しいと思える日が来るのだろうか。
胸を焦がすこの想いを昇華させられる日が来るのだろうか。
彼女への愛を消し去る日が来るのだろうか。
この永遠とも思われる苦しみから
解放される日は来るのだろうか・・・。
愚かなことを・・・
余りに女々しい自身に忌々しさを覚えつつ、この場から離れようと身を翻そうとしたその時・・・
視界に入ったのは
最も見たくもない光景・・・
ユリアと
ケンシロウ・・・・・
二人大木の下で寄り添いながら、
何か話し込んでいるようだ・・・・。
常の無愛想さはどこにいったのか。優しい顔のケンシロウ。
そして
幸せそうに微笑むユリア・・・・
求めて止まない彼女
だが手にはいることのない愛する女性
決して自分に向けられることのない
その笑顔に
抑えきれぬ激情の波が俺に襲い掛かった・・・・・。
何故諦める必要がある
・・・・だまれ!!
それでもいいのか
うるさい!うるさい!!
何を迷うことがある
くっ!!!
奪いとれ・・・!!!
ソウダ・・・。
テニハイラヌナラ。
イッソ・・・
どれ程の時が経ったのか・・・。
気がつけば周囲は深い闇に包まれようとしていた・・・。
先ほどまで俺を支配していた頭の痛みは
すっかりと消え去り・・・・。
代わりに俺の瞳に宿るは・・・・
先ほど聞こえたあの声が
果たしてジャギのものだったか。
俺自身のものだったか。
確かめる術は無く。
そして
最早そんな事はどうでも良かった・・・。