ぐはっ!!!
苦痛が前触れもなく襲い。
抗う術もなく、俺は胸元を押さえる。
そうしたからといって、痛みが軽減される訳でもなく。
傾きかける身体をどうにか進めつつ、身近な岩にへと身を預ける。
朋友
苦痛を逃れるかのように身体を動かすと、視線に入るは死兆星。
昼間だというのにその輝きは絶えることなく。
禍々しい光を放ちつつ頭上に君臨している・・・・。
ふっ。とうとう昼間でも死兆星がみえるようになったか・・・・。
苦い笑いと共に一人言葉をつむぐレイ。
だが、彼にはその場に留まる猶予も、
己の境遇に対して自嘲する時間も残されていなかった。
一刻も早く、マミヤの下へ・・・・・。
痛みを訴える身体を、ともすれば折れてしまいそうな精神を奮い立たせ
レイは進む。
マミヤの下へと・・・・。
「マミヤさんなら、レイのためにメディスンシティーに」
バットの言葉は、俺に多くの困惑と、微量の喜びを与えた・・・。
マミヤ・・・・
俺なんぞの為に危険を冒して薬を求め旅立った最愛の女性・・・。
トキやケン、他の人々に助力を求めることなく。
単身で飛び込んでいった女。
その無謀ともいえる行動の目指すところは。
俺のため
そう思うのは、うぬぼれではないはずだ・・・。
無茶なことを。
そう拳を握り締めた傍ら。
俺の身体に甘美な感情が支配したもの事実。
マミヤが俺の為に。危険を冒して・・・。
しかしそのような感情に理性が征服されたのは一時のこと。
彼女は単身危険地帯に赴いた。
しかも彼女の性格から『薬を奪う』という目的を遂げるまで
決して引かないであろうことが容易に推測される。
この命尽きるとも、この肉体が四散しようとも。
彼女だけは救わねば・・・。
そう思い、そしてそう願い。
アイリやリンに口止めをして進んだ結果がこれだ・・・。
未だメディスンシティーには程遠く。
俺の身体は所有者の意思に反して動こうともしない・・・。
ただ眼前に輝く死兆星の瞬きを、
岩場に凭れながら眺めるだけ・・・。
「こうしてはおれん」
そう、この間にもマミヤは危険に晒されているかもしれないのだ。
俺のことなどどうでも良い。
マミヤを、彼女を助けねば・・・・。
痛みを訴える身体をどうにか酷使しつつ
数歩、歩みを進めるレイ。
ぐらり
レイの意思に反して倒れこもうとする身体を支えたのは・・・・。
ケンシロウ
無謀ともいえるマミヤの行動に対しても。
ヤツに何も言わず村を出た俺に対しても。
何も言わず。
ただ俺の身体を支えている・・・。
交差する視線の後、ケンシロウが口を開く。
「行こう」
余りにも
当然といった感じで・・。
俺の腕を取り、身体を支えるケンシロウ。
何も言わずとも分かり合える。
何も言わずとも理解してもらえる。
この世紀末に
手に入れた得難い宝玉。
ともに戦い、背を預けられる戦友。
例えそれが、この上なく強力な恋敵であっても・・・・。
親友兼恋敵の男に、
感謝しつつ、そして苦笑しつつ
「どこまでもおせっかいなやつめ」
憎まれ口で俺は対応した。
inspired
「人間、自分ひとりでできることには限界がある。
だけど、人と力を合わせると、不思議なことに不可能も可能に、夢も現実になっていく。
だから、出会う人を大切にするんだよ。」