ほうじ茶日記 Vol 2 後輩との懇親会
今日も良い汗をかいた。
道場での組み手を終えて帰宅しようとした私を止めたのは、レイだった。
少しこの後時間はあるか、と。
稽古の申し出かと思いきや、食事の誘いだった。
シバが私の帰りを待っているのだが・・・、と躊躇はするものの
レイの「いつもあんたに世話になっているんだ。まあしぶらず付き合ってくれ」
の言葉にうなずいた。
その気持ちが嬉しいではないか。
かわいい後輩の心遣いを無碍にすることも出来ず、
それでも、やはりシバを一人にしてあまり遅くなるわけにもゆかず、
茶を付き合うということで話は決まった。
向かうは道場の近くにある軽食屋。
レイは何やらメニューと格闘してようやく注文をすると、
自然と話は道場のこととなった。
技のこと、稽古のこと、南斗の拳士たるものの務めのことを
熱心に尋ね、話し、私の言葉に耳を傾けるレイ。
ああ、目の前の青年のなんと頼もしきことか。
今はまだ未熟さもあるが、長じればさぞや立派な南斗の拳士となるに違いない。
己と同じく六聖拳伝承者たる運命を担った若者。
彼らが成長し、サウザーや私と並んで南斗を支えていくその未来を楽しみに感じた。
そのとき。
ウェイターが注文の品を持ってきたようだ。
私の前に置かれるは、昆布茶。
レイの前には。
ん?
コト、コト、コト、コト・・・・
レイ、一体いくつ注文したのだ?どんどん置かれているぞ。
しかも匂いから察するに。
ホットケーキ、プリンアラモード、ショートケーキ、おしるこ、カキ氷、
そしてこれはチョコレートパフェか。
All 甘いものづくし。
嗚呼、まだまだ子供だな、レイ。
お前が甘いものを好むとは、知らなかったぞ。
私が一杯の昆布茶を飲み干すまでに、レイは全てのモノを平らげ、
そして追加注文をする始末。
健啖家だな、レイ。
うむ。男子たるもの、拳士たるもの、それでよい。
食さねば人は大きくなれぬ、強くなれぬ。
大きくなーれ (By 丸○ハンバーグ)
ニコニコと眺める私。
食べ続けるレイ。
厨房とテーブルを往復する店員。
胸焼けして席を立つほかの客。
厨房から出てくる店主。
慌てて食材を買出しにいくコック。
緩やかに、和やかに平和な時間は過ぎていった。
「いやー、今日は楽しかった。ありがとう、シュウ!」
とにこやかに言うレイ。
こちらこそ久しぶりに楽しい時間を過ごさせてもらった。こちらこそ礼を言うぞ。
道場では特訓や組み手ばかりでこのような時間を過ごすことはなかった。
なかなか良いものだな、こういった時間も。
うむ、次回はサウザーを誘ってみるか。
と、しみじみと考えていると。
「あ、まずい。今日はアイリが俺のために飯を作ってくれる筈だった。
すまん、シュウ。これで失礼する。また道場でな。」
と足早に去っていくレイ。
そうか、もうそんな時間か。私も帰らねばな。シバが待っている。
レイとは反対方向に歩を進めようとしたその瞬間。
私の腕を掴んだのは、店の者だった。
「お会計をお願いします」
ん?そうか。幾らになる?
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
すまん、もう一回。
・・・・・・・・・・・・・・・・
すまないな、シバ。
お前と約束していたグローブだが、プレゼントは翌月になりそうだ。はっはっは。
しかし、なかなかかかるものだな。はっはっは。
確か私は昆布茶しか頼んでないが(後は水)。はっはっは。
さすが若いものの食欲は違うな。はっはっは。
給料日まで後何日かな?はっはっは。
翌日から昼はビスコ(150円)だな。はっはっは。
しまった、金が足りないぞ、はっはっは。
店主、ツケはきくかな?何?無理?それは困った、はっはっは。