「ハマグリよーし!あられよーし!甘酒よーし!桃の花よーし!!」
所用で家を離れていた僕を迎えたのは
楽しそうに連呼をとる父の姿だった。
プチほうじ茶日記
イベントごとは大好きです
男所帯。
綺麗とは言いがたいキッチンシンクに、所狭しとおかれている買い物の山
その隣で、両手を腰にあてて嬉しそうに品物をチェックしている父。
なんだろう。
頭の中では無数のクエスチョンマークが飛び交っていたが、正直怖くて尋ねれない。
だって
父がこんな風に楽しそうなのって。
絶対碌でもないこと企んでいるときだもの・・・・・。
とりあえずリゾさんからお借りした書籍を仕舞おうと、リビングの扉を開けたとき。
僕の目に飛び込んできたのは
お内裏様にお雛様。三人官女に隋身、五人囃子・・・・・
女の子だったら飛び上がって喜びそうな雛壇が設営されていた。
「驚いたか!シバ」
いつの間にか僕の後ろに立っていた父。
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何もいえない僕に
してやったり。と言った様子で父はふんぞり返る。
「以前丹波の節句(注;誤り。正しくは端午の節句)の時には
(何故か)お前に不評だったからな。今回は下準備万全で今日と言う日を迎えた!!」
どうだ!!何か文句あるか!!!
とばかりに自信満々な父。
一体誰が父の誤りを指摘できるだろうか。(否、いない)
美しく飾られた雛人形に
花瓶に飾られた桃の花に
皿に上品に盛られた色とりどりのあられに
かわらけに注がれた甘酒に
美味しそうなハマグリのお吸い物に
端午の節句はダメダメだったのに、ひな祭りはなんでここまで完璧なんだ
一瞬恨めしく思ったのだけれども
父のその気持ちが嬉しくて
「有難う、父さん」
満面の笑みを父に贈った。
因みにこれから僅か数分後・・・
父の作ったちらし寿司(イクラの代わりに魚の目玉)が登場し。
先ほどまでの感動は強制終了と相成った。
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