こんな夢を見た・・・










僕はただ一人湖の前で佇んでいる。
周囲には人一人いない。深い、深い森の中・・・。









ここはどこだろう?
なぜ僕はこんなところに・・・?

不思議に思い、きょろきょろと辺りを見渡す僕の前に
湖の中から、音もなく現れる一人の美しい女性・・・・。








空の蒼を映した長い、青い髪をもち
透き通った湖畔の穏やかさをその瞳に秘めた女性は
慈母のような微笑を両の頬に浮かべながら、こう宣った・・・・・・。



貴方が落とした父親は
天然のシュウですか?しっかり者のシュウですか?」




しなやかな両腕に、二人の父を抱えて・・・・。



プチほうじ茶日記 
       やっぱり父さんはこうでなきゃ








「変な夢を見たよな〜」

寝台から身を起こし、思いっきり伸びをしながら先ほど見た夢を思い返す。




「どうしてあんな夢を見たのだろう・・・。」

思わず浮かべる笑み・・・。


「それも『しっかり者の父さんです』なんて答えてしまうなんて・・・」


いくら夢でも父親に対して失礼だ。
先日思わずとった行動(トレイでバチコーン☆強制就寝)といい、父親に対してこれではいけない。
少し気が緩んでるのかもしれない。




バチン

気合代わりに顔を軽く叩くと、衣服を整えると部屋から出る。



さあ、今日の朝ごはんは何にしようか・・・・。








台所に通じる扉を開けると、そこには父の姿があった・・・・。









「おはようございます。父さん。早いですね」

・・・・そう言いながらも僕は正直驚いた・・・。
いつもなら朝食の用意が出来てもなかなか起きようとはせず
「う〜〜〜ん。後10分。いや5分でいい・・・。もう少しだけ・・・・」
って散々ごねる筈なのに・・・。



「うむ。おはよう。シバ。今日もいい天気だな・・・」


・・・なんだか今日の父さんはシャンとしてるな・・・。何か道場で行事でもあったかな?


「すみません。今すぐご飯作りますね・・・って。と、父さん。こ、これは・・・・!!!」




僕の視界に映ったのは湯気を立ててテーブルに並ぶ朝食・・・。


こんがりと焼けたパンに、卵とベーコン。ポテトサラダとトマトが彩りを添えている。
そして
珈琲のポット・・・・。




あ、あの父が・・・・!!!
どんなにウェスタンな料理とでも、洋菓子とでも、
「ほうじ茶は何にでもあうのだ!!!珈琲、紅茶など片腹痛いわっ!!!」と
決してほうじ茶以外の飲み物を飲もうとせず、出そうともしなかった父さんが・・・。





「あ・・・、あの。どうかしたんですか?」


「うん?なんでもないぞ。さあ、冷めないうちに食べよう」


爽やかな笑みを浮かべて席に着く父。






朝食も、珈琲もとっても美味しかったけど、
正直味は分からなかった・・・・。











「ご馳走様でした」

「うん?おかわりはいいのか?珈琲は口に合わなかったか?では紅茶でも・・・・」

「いいえ、いいえ。結構です。お構いなく・・・・」



なんだか自分の家なのに落ち着かない・・・。







「お皿は僕が洗いますのでおいといてください」
僕がそういうと。

「気にするな。他の洗い物もある。私がしよう・・・・」
即答する父・・・。


いや、だって父さん。
以前
キッチンタンク洗い用のたわしで食器洗ってましたよね・・・。
泡を十分流さずに皿を片付けていましたよね・・・。


「お手伝いします!!」
とムリに割り込めば・・・。


鮮やかな手つきで次々と洗い物はおろか、キッチンを片付けていく父さん・・・・・。



なんだ・・・・何が起こったんだ・・・・








「じゃあ、洗濯物でも・・・」
と言うと、

「もう終わったぞ」
即答。





「掃除は・・・・」
と言うと、

「大丈夫だ。任せておけ」
と返される。






挙句の果てに

「シバ。家事は気にしないでいい。
子供は子供らしく外で遊んできなさい。」

等と言う始末・・・・。








キモイ・・・・





渋る僕を追い出した後、父さんは家の大掃除を行ったようだ・・・。



帰宅した僕はピッカピカになった部屋で暫し呆然とした・・・。




おかしい
おかしいおかしい
おかしいおかしいおかしい
おかしすぎる・・・・・・・・・!!!!




どうしたんだろう・・・。熱でもあるのだろうか?
何か変なモノでも拾い食いでもしたんだろうか・・・・。



こんなこと今までなかったのに・・・・。









困惑する僕の耳に飛び込む扉を開ける音・・・。
父さんが帰ってきた・・・・。









「今日も実り多き一日だ」


開口一番、満足そうに呟く父さん・・・。


「はあ、そうですか。」
生返事を返しつつ、父さんを迎える僕。



「うむ、色々改革をおこなってきたぞ・・・。
相変わらず子供をいびり倒すサウザーにはとりあえず
警察に通報してきた。
児童虐待の常習者がいるとな
今晩はブタ箱入りだろう。まあ、
良い薬になる・・・。」



え・・・・?




「女性門下生にセクハラを続けるレイには、彼の現状と詳細を綴った書簡を
実家の両親にあてて送りつけた。
ま、レイが
溺愛してる妹にも同様の手紙を送っておいた。
数日内で実家から呼び出しがあるだろう。
やはり他人の言葉よりも身内の言葉は響くものだからな。」


父さん・・・・




「シンは報われる筈もない愛に身を焦がすよりもと、一つアドバイスをしてきた。
『男なら言葉よりも行動しろ!!』とな。
第一不毛ではないか・・・。悶々と日々を過ごすより、実行に移したほうが良いだろう。
そちらの方がより生産的だ・・・」


そのアドバイス・・・、
裏目に出ないといいんですけどね・・




「日ごろからやれ化粧だ、UVだで修行にイマイチ身が入ってないユダにははっきり言ってやった。
『お前がいくら化粧しても、なれるのは
オカマだけだ!!すっぱり諦めろ!!』と」


うわあああ・・・・。皆が思っててもいえないことを・・・・・






「兎に角!!!

やつらには誇り高い南斗の一翼を担っていると言う自覚が足りなさ過ぎる!!
これまでは私も甘かった。
今後心を鬼にして、ビシバシといかんとな・・・・・」




拳を握り締め、声高らかに宣言する父。








いや・・・・。

父さんも十分自覚なかったですよ・・・・。


そう突っ込みたいけど突っ込める雰囲気ではなく・・・・。



でも我慢できなくて・・・・。




僕は叫んだ。声の限りに・・・・







「もう、勘弁してください!!!!」











気づくとそこは寝室だった。
朝日が窓から差し込んでいる。




「夢か・・・。それにしても恐ろしい夢だった・・・」


ほーっと安堵のため息をつく。





しかし


台所に人の気配を感じて、一瞬強張る。

意を決して扉を開けると・・・。








いた・・・・。
父さんの姿が・・・・・




やっぱりアレは現実だったんだ・・・・。













「おはようございます。父さん。早いですね」

恐る恐る朝の挨拶をする僕に、父さんは爽やかな笑顔と共に振り返った。



「うむ。おはよう。シバ。今日もいい天気だな・・・」





「・・・すみません。今すぐご飯作りますね・・・





「いや、もう準備が出来ている」


常ならぬ父の言葉に視界が急激に狭まり、世界が暗転するのを感じた・・・。
やはり。夢ではなかった。これが現実だったんだ・・・。




がっくりと肩を落としつつ、ひとまず僕はテーブルに向かう。
善後策は食事を済ませてから考えよう・・・。

しかし


「ご飯って。と、父さん。こ、これは・・・・!!!」




僕の視界に映ったのは、テーブルに行儀よくちょこんと並べられた朝食(?)・・・。




ビスコほうじ茶

















呆然と立ちすくむ僕を見て、少々気まずげに話し出す父さん。





「いや、実はな。このところ物入りでな・・・・。
ユダからはSK-2とやらを買って欲しいとせがまれてな。
SK-2が何だと?知らん。どうしても必要だと言うので、先輩である私が買ってやった。
恐らく何か修行に使うのではないか?ともかくそれが結構値がはっていてな・・・。」


・・・・・・・父さん






「それについ先日、ある子供の家に謝罪しに行った時菓子折りを持参したのだが・・・。
一つあたりはそれほど高価なモノではなかったが、なにしろ訪問件数が多くてな。
ああ、サウザー絡みだ。また頭に血が上って小学生と口論を始めて泣かせたのだ。しかも大勢。
ヤツも反省しているのだろうが、口下手な漢ゆえ・・・。私にその任(謝罪)を託していった。」


・・・・・それって上手いこと利用されてるだけじゃあ・・・。






「レイからはまたメシをたかられてな・・・・。
ああ、そうだ。先々週からつい昨日までずっとな・・・。昼はほとんど私の奢りだった。
ヤツとは親友だしな。それにあいつも食べ盛りで、あの健啖ぶりは清々しくまであったが・・・。
昨日私が空っぽの財布を見せたら、ようやくたかるのを辞めてくれたよ。」


絶対親友じゃない!!そんなの親友じゃない!!!






「仕方ないので、少々情けないながらシンに少し金を借りようかと頼んだのだが。
一刀両断されてしまってな。
『俺にはそんなつまらぬことに費やす時間などない!!俺が欲しいのはユリアだー』
とまた意味不明なこと叫んでから飛び出していった・・・・」


・・・・・・・確かに意味不明ですね。前の文脈と後ろの文脈が繋がってません・・・。










「とにかく、次の給料日まで全く金がない状態でな。
シバ、すまんが暫くはこれで勘弁してくれ・・・・」






・・・・・・父さん。次の給料日って
3週間先なんですけど・・・・・。





思わず叫びだしそうになった僕だったが、ぐっとこらえた。










どんなに気が良過ぎても、天然でも、抜けていても。


これこそが父さんだ・・・。


しっかり者な父さんなんて父さんじゃない・・・。











黙りこくっている僕を不審に思ったのか、おずおずと語りかける父さん・・・。




「シバ、怒っているのか?流石に三食ビスコとほうじ茶は嫌か・・・?
・・・・・はっ!それならばほうじ茶と昆布茶を隔日でローテーションすると言うのではどうだ?
飲み物しだいでなかなか趣も変わると言うもの・・・・」





不安げに。そうとても不安げに語りかける父さん・・・・・。









ああ・・・全く・・・。父さんには勝てません・・・・。












一つ息を吐き出すと、ゆっくりと父のほうを振り返る。


「いいんですよ。さあ、ほうじ茶が冷めないうちに頂きましょう」


















いいんです。父さん。貴方は貴方のままでいてください。
というかしっかり者の父さんなんて父さんじゃありませんから・・・。









もし再びあの夢を見たとしたら、
「貴方が落とした父親は天然のシュウですか?しっかり者のシュウですか?」
そう尋ねられたら・・・。

僕は答えよう。なんら躊躇することなく・・・・。


「はい。僕が落とした父親は、皆が慕う父さんは、南斗白鷺拳、仁の漢は
少しとぼけてて、天然で、人がよくて、ちょっと抜けているこの人です」って。












僕の返事によほど安心したのだろう。
リラックスした面持ちでほうじ茶を啜る父さん。



僕もテーブルにつくと、前に置かれたビスコを手に取り口に含む。








サクッ







僕の口の中に
ビスコの仄かな甘さが広がり。




僕はゆっくりと微笑んだ・・・・・・。



あとがきと言う名の言い訳


またまたシバ視点のほうじ茶日記。
いつも彼は父さんに悩まされてますが、でもそんな父さんが大好きなのです。

やっぱり父さんはこうでないとね。
つーか、あの南斗のメンバーにシュウがいなかったら
北斗以上にギスギスしてそうだもん。
北斗にはトキ兄がいるように、南斗にもシュウがいるのです。ビバ☆癒し系。



貴方が落とした●●はどっち?ネタ。
なかなか他のメンバーでやってみても面白いかも・・・。

レイ→貴方が落としたマミヤはどっち?素直でなんでもさせてくれるマミヤ?気丈でたくましいマミヤ?
A.・・・・・・・・・・・・(ブツブツブツブツ。どっちにしようか・・・)
マミヤ→貴方が落としたレイはどっち?シスコン?セクハラ?
A.両方いりません
シン→貴方が落としたユリアはどっち?等身大フィギア?でかいババアの変装してるユリア?
A. どっちもいらんわい!!!!
サウザー→貴方が落としたお師さんはどっち?ミイラ?干物?
A.おのれ,わが師を愚弄するか!!勿論そっちだ(と干物を選択)
ユダ→貴方が落としたレイはどっち?ツンデレ?鈍感?
A,・・・・・・・・・・・・・・・・・(ブツブツブツブツ。どっちも変わらん)
ジャギ→貴方が落とした弟はどっち?眉毛?キム?
A.眉毛はともかく・・・。キムって誰だよ・・・。(確かいたよね)




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