ほうじ茶日記 Vol 6 私、怒ると凄いんです
来ない・・・・
シュウは正面の時計を見た。
ただ今12時20分。
そして集合時間は12時だった筈。
9月、夜は大分涼しくなったが、まだまだ日中は暑い。
とある、飲食店の前で。
シュウは太陽の光を一身に浴び、光合成に勤しんでいた・・・。
事の発端は、やはりというか、シュウだった。
懇親会と銘打って、南斗の拳士5人を集め
「お食事会」とやらを立ち上げたのだ。
渋るサウザー、シンを説き伏せ、
興味なさげなユダを「レイは来るぞ」の言葉でねじ伏せ。
「何?自前ではな・・・。俺はただ飯以外に興味はないのだが・・・」
とのたまうレイを拳骨で黙らせ。
今日という日を迎えたのだ。
店の手配もバッチリだ。
雑食のレイは別として、それぞれこだわりのある者ばかり。
サウザーには干物を、シンにはチーズとワインを(昼から?)、
ユダにはローカロリーの食事を。
それら全てが揃う店を探すのは困難を極めた(実際一番の被害を被ったのはリゾだったが)
全ては南斗の結束のために!!!
流派の更なる発展のために。
こうして親睦会開催ととあいなったのだ。
が。
・・・・来ない。誰も。時間になっても。
一番最初に(それでも遅れてだか)あらわれたのはサウザー
どこか律儀な男だ。
文句を言いつつも参加するところに、彼が寂しがり屋さんということが分かる。
次に現れたのはシン。
稽古で遅くなったのだろう。
普段は憎まれ口を叩く彼だが、根は真面目な好青年だ。
「遅くなった。すまん」と決まり悪げにぽつりと言うシンに、
シュウの握り締めていた拳の圧力が減少した。
次に駆け寄ってくるはレイ。
「すまない、シュウ。アイリが、妹が近くまで寄ったというものだから、つい長話を・・・」
うむ。身内を大事にするということはすばらしいことだ。
しかし、レイ。
一ヶ月前から通達しておいて、顔を付き合わせるたびに確認を取っていた私よりも妹か?
確かお前、三日前にもそれで稽古サボったよな?
「妹が来るから」・・・・と。
私=先輩=一ヶ月前からの先約<<<<<<<<<<<<<妹か?
ソレが正しいヒトとしての在り方なのか?
私が、悶々と悩んでいるうちに、時は冷酷に過ぎ去っていく。
時計の針は12時半を刺し、次々と進んでいく。
切れかけの3人をなだめつつ(何故私が?)、
最後のメンバー、ユダを待った。ひたすら。
5分経過。
10分経過。
15分経過。
全く。
何回目かになるため息をついた、その次の瞬間。
うっ!!!
なんだ、この匂いは。臭い。
匂いの発生源に顔を向けると、そこにはユダの姿が。
くさいくさいくさいくさいくさいくさいくさいくさいくさいくさいくさいくさいくさいわー!!!!!
涙目になりつつ、鼻を摘みつつ、私はユダに問いかける。
遅刻の理由を問いただす余裕などもはやナッシング。
「ユダ!!お前なんだこの匂いは!!」
「うむ?この美しい俺が放つ匂いにすら酔ったのか?
罪なことだな、美しいということも」
「違う!!断じて違うわ!私が聞きたいのはこのどぎつい匂いのことだ!」
「フン、これだから、頭まで筋肉に出来ている輩は困る。
これは香水というものだ。お前のようなものには一生縁のないものだがな」
「香水くらいは知っている。しかし少し付け過ぎではないのか・・・?すごい匂いだぞ」
「これくらい紳士としての、ジェントルメンとしての、嗜みだ!!!!!」
そうなのか?
私は視覚を失った代わりに他の感覚が鋭くなっている。
これが一般的というものなのか?
違う。そうではない。これは絶対付け過ぎてる。
しかし個人のセンスに文句をつけるのも憚られ、とりあえずユダを諭す。
「ユダ。香水もよい。嗜みも構わん。しかしそんなことよりも
まず待ち合わせ時間を守る、といったことの方が先ではないのか?」
「何を言う。この美しい俺を更に輝かせることより、
優先することなど一つもない」
・・・・・・・・・・・
全く最近の若者は。
脱力した私は、背後に控えている同僚と後輩たちからも、ガツンといってもらおうと。
後ろを振り向いた。
・・・・・
いない
いや、いないのではない。
先に店に入っている。
先に注文している。
先に食っている。
この炎天下の中私一人を置いて。
コーヒーを優雅に飲むシン。
このケーキは口に合わぬとテーブルを蹴飛ばすサウザー。
プリンを嬉しそうに食べるレイ。
そのレイの元に嬉々として駆け寄るユダ。(脱力している私をスルー)
ブチン
頭の中で、何かが、切れた。
その後、
聞け、我が魂の叫びを!!!!!
と吼えまくったシュウの珍しい姿が見られることとなり。
正座させられ説教を食らう4人は
、
「普段温厚なヤツほどキレたら怖い」というセオリーを痛感することとなった。
あとがき
怒らせると怖いよ、シュウは。
ちなみにユダが遅れてきたのは、レイに会うのにおめかししてたから。
きっと、
「コマク、どうだ。この色は?俺は美しいか?」
「はいユダ様、とてもお美しゅうございます」
「コマク、どうだ。この髪型は?俺は美しいか?」
「はいユダ様、とてもお美しゅうございます」
「コマク、どうだ。この香水は?俺は美しいか?」
「はいユダ様、とてもお美しゅうございます」
・・・・・
ってな具合でエンドレスにやってたんだろう。
朝の7時から。