涙12 Side マミヤ

 


レイ。

貴方が逝ってから、私の頭上の死兆星が消えてから。
もう半年経ったわ。
その間、色んなことがあったのよ。


ケンは去り、トキも病の身をおして戦場へと赴き。
いつの間にかバットとリンちゃんまで。
・・・あの子達と一緒にバギーも一台、消えていたわ・・・。
ガソリンが満タンのモノを選んでるあたりがバットらしいというか・・・。
全くちゃっかりしているわ、あの子。

そういえば、レイ。
先日交易に現れた隣村の一人が、アイリさんに御執心でね。
猛烈にアタックしていたのよ。
最後にはアイリさん、困って逃げ出す始末で・・・。

貴方がその光景を見ていたら、どうなっていたんでしょうね。

・・・きっと、血の雨が降ってるわよね・・・。


ふふふ、と短い笑いが墓地に木霊する。

 

 

 

 

村はずれ、死者を弔う墓地の一角。


マミヤはいた。
戦闘服ではない、女性らしい装いで。
比較的新しい墓の前に。

 

 


復興しつつある村のこと、ここにいないあの4人のこと、
彼の妹のこと、近隣の村とのやり取りのこと、
果てには村で飼っている子犬(ペル)のことまで。

時には楽しげに、時には憤慨しつつ、時には呆れつつ、
言葉を紡ぐマミヤ。

 


穏やかな時間だけが過ぎてゆく。

 

 

 

日が西に傾き、他に伝えることがなくなっても。


マミヤはそこにいた。
去ることなく。身動ぎもせず。墓の前に。

 

 


ねえ、レイ。
私今でも思うの。
貴方がケンと一緒にひょっこりと戻ってくるのでは、って。
いまでも貴方の死を受け入れることが出来なくて・・・。
貴方が明日にでも帰ってくるのではないかって・・・。
毎日城壁から外を眺めているの・・・。

 

馬鹿みたいでしょ?あれからもう半年も過ぎてるのに・・・。

 

 


あの時貴方は言ったわね。

「しあわせにな!!」って。

 


大丈夫。私は今幸せよ。

あの男の呪縛から、闘いの日々から、運命(死)から解放されて。
村人に、長老に、アイリさんに、いろんな人に包まれて。
守られて。癒されて。

 

私は幸せよ。とても。

 


でも。
私の隣に。


貴方はいない。

 


・・・。駄目ね。
また泣いてしまったわ。
すっかり涙もろくなっちゃって。
・・・誰かさんが散々甘やかしてくれた所為かしら?

 

 


・・・レイ。

貴方の事を。
想い出に、しまい込むには。
あまりにも、早すぎて。

 

 

ああ、泣いては駄目ね。
こんな気持ちのままじゃ。

ああ、泣いては駄目ね。
これ以上。


泣いてはいけない。

 


私は生きる。

精一杯生きるわ。

レイ・・・、貴方の真摯な想いに応える為にも。

 

 

 


でも。

それでも。

許してくれる?


たまにこんな風に涙を流す事を。
こんな弱い私を。

 

貴方がいないこの世界に。
貴方を失ったこの喪失感に。

私がいつか乗り越えられるその日まで。

 

 

 

 

身を屈めて泣きじゃくるマミヤ。


慈しむかのように


一陣の優しい風が彼女の周囲を吹き去っていった。

 


 

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