数多の女を抱いてきた
だがそこには愛などといった感情など存在しなかった。





女。俺にとってそれは性欲を満たすだけの存在。




はっきり言えば、どんな女でも良かったのだ。









   襲い来る寂寥感を一時でも忘れさえせてくれたら
    
   
     この耐え難いまでの飢えを満たしてくれたら
     
     
       爆発せんとする欲望を果たせたら・・・。











だが



彼女への想いは違った・・・












いつから彼女の姿を目で追うようになったのだろう・・・。

いつからこのような感情を彼女に抱くようになったのだろう・・・。

いつからこんなに彼女を欲するようになったのだろう・・・。








気がつけば



俺の目は常に彼女の姿を映していた。
俺の耳は常に彼女の声を探していた。
俺の心は常に彼女を求めていた・・・。







マミヤ・・・・・








          world's end










無防備に俺に微笑む彼女。
無邪気に語りかける彼女の声。
時折触れる彼女の白い手・・・。





彼女の何気ない所作の一つ一つが
俺の心を震わせ、喜びで満たし、そして絶望を与える。









ああ・・・



気が狂いそうだ・・・。

















いっそのこと

そう、いっそのこと・・・。



手に入れようか・・・。





泣き叫ぶ彼女を無理やり寝台に押し倒し
薫る肌を欲望のまま蹂躙するのだ

あの手も、胸も、唇も、指も。彼女の全てを。
奪いつくし俺のものに・・・。

どれ程抵抗しようが、拒絶しようが。所詮は女。
力で組み伏せればよい


どんなに許しを乞おうとも
どんなに懇願しようとも
どんなに泣き叫ぼうとも


奪い尽くせばよい






彼女の全てを俺で満たせばよい








欲望のままに・・・・














そして





誰の目にも触れさせず
誰の手も触れさせず

ただこの腕の中に閉じ込めればよい




俺一人のものに
俺一人だけのものに・・・。


















なんという甘美な誘惑・・・・。







狂気にも似たこの思いに
身を任せてみようか






俺が
ほんの少し手を伸ばすだけで






彼女は俺のもの


俺は世界を手に入れられる
















奪っちまえ・・・・


俺の身の内に巣くう狂気のバケモノが甘美な言葉で誘惑するかたわらで。










酷く冷めた冷静な思考が警鐘を打ち鳴らす。




ヤメロ・・・。
力ずくの行為に及んだとしても・・・・。
結局お前は何も手に入れることは出来ず
そればかりか失ってしまうのだ・・・・


と。























そうだ・・・。




分かっている






無理やり自分のモノにしたとしても・・・

この腕の中


そこには彼女はいない


彼女の心はない





俺を惹きつけてやまぬ、あの輝く瞳も
ふとした時に見せる、あの優しい表情も
耳に響く、あの笑い声も
悪戯っ子のように微笑むあの笑顔も・・・。




何もない





ただの抜け殻だけ









分かっている。そんなことは・・・・。















彼女の笑顔を
「守りたい」




彼女の全てを
「奪いたい」







二律背反(アンビバレント)な想いが



俺を絶え間なく苛む


















ああ



ああ




気が狂いそうだ



















前にも後ろにも進めない




この想いを、欲望を、熱を

捨て去ることも、昇華させることも、冷やすことも出来ず

伝えることも、果たすこともできない





そうして俺はもがき続ける


























愛というものが




これほど甘美で



これほど苦しいものとは

















与えられる信頼

微笑み

無防備な姿


そして・・・


ヤツに想いをはせる愁いを帯びた彼女の横顔








それら全てが
俺を追い込む


狂気の世界へと・・・













ああ



いっそのこと








みんな、みんな壊れちまえ・・











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