Trick or treat

(季節かなり違います。ご容赦ください。
 アホで且つ微エロ?です)


夕刻。
仕事を終え、帰宅の途についたマミヤ。
扉を開け家に入る。しかし中は真っ暗だった。

おかしい、先にレイが戻っているはずなのに。
その時、暗闇から。

「Trick Or Treat」

声が聞こえた。



瞬間ヨーヨーを取り出しかけたマミヤ。しかしその声には聞き覚えが。

目を凝らすと、そこにはレイ。
何故かをすっぽいと頭から被り、微動だにせず直立している。

「…何してるの?…」
かなり疑問形になってしまった口調は致し方ないであろう。
どうして室内で布被り?
室内で被り物をしていると、禿げるわよ、レイ。

しょーもない事を考えつつレイに視線を向ける。


「Trick Or Treat」


繰り返すレイ。布の隙間から見えるレイの瞳。
その中に悪戯っ子のような光が浮かぶ。


『ああ、そうか。』

そういえば数日前から子供たちが騒いでいた。
子供がお化けの格好をして大人たちにお菓子をもらうというイベント。
勿論こういった企画の発生源であるバットにいたってはおおはしゃぎ。
仕事そっちのけで、日ごとに衣装をひっかえとっかえし、
小規模なファッションショーを繰り広げている。

(ちなみに、一度アイスホッケーのような仮面を付け現れた彼は、 
アイリさんからの絶叫を受け、早々に取りはずした)

自分が納得がいったのを感じたのか、ニヤリ、と口の端を上げ、


「Trick Or Treat」


とくりかえすレイ。


『だからといって、貴方がそんなことするなんて』

子供たちならいざ知らず、いい年をした大人が、
しかも南斗水鳥拳伝承者である彼がハロウィンに自ら参加するか?


リハクあたりが見たら涙を流すに違いない。

しかも、仮装といえるのか、微妙なその格好。
他人に見られた日には、どんな噂を立てられることやら。
ただでさえ、未だにシスコン呼ばわりされているというのに。

『これは早急に撤収させなければ!』


しかし、これまでの彼の行動を見る限りすぐにはやめてくれそうにない。

「これ!」と決めたことには結構粘着質なのだ。レイは。

かくなる上は、彼のお遊びに付き合ってさっさと終わらせるのがベストであろう。
そう考えたマミヤはとりあえず部屋の灯りをともし、引き出しを物色する。

…あった。

ミル○ー
ママの味をレイに渡す。

しかし、

「駄目だな」

ミ○キーをポイっと投げるレイ。


腹が立ったが、一刻も早くこの茶番を終えたいマミヤは新たなブツを物色する。

…あった。
チ○チョコレート
10年前と変わらない価格。
庶民の味であるソレをレイに渡す。

しかし、

「駄目だな」

と再びチロ○チョコを投げ捨てる。


自分の眉間にが現れたのを認識しつつも、マミヤは物色を続ける。

よっ○ゃんイカ
サクマド○ップ
うま○棒
ジャイアントカ○リコ
きの○の山
べ○ースターラーメン
ジンギスカンキャラ○ル
ポテトチップ○

しかし、全てが
「駄目だな」
の台詞と共に床に落ちた。


秘蔵のキット○ット(イチゴ味)さえも捨てられたマミヤは遂に。

切れた。


「なによ、なによ、なによー結局なにが欲しいのよ。もう何も無いわよ!!!」
怒るマミヤ。

「よく考えるんだな。俺の一番欲しいご馳走。お前も良く知っているはずだ。」
対するレイは涼しい顔で答える。

「これ以上付き合ってられないわ。」

氷点下の冷たさで切り捨てるマミヤ。


レイの側を通ろうとした次の瞬間、腕をつかまれた。
見上げると、真剣なレイの瞳。

「ご馳走はしてくれんのか?」

腕の拘束を強めるレイ。その瞳に負けじとマミヤは言い返す。

「なにが欲しいって言うのよ。もうこれ以上付き合ってられないって言ったでしょ!」

振りほどこうとするが、その拘束は万力のようで。

レイはマミヤの耳元に口を近づけると、

「そうか。ご馳走してくれないというのなら…、いたずらすることになるぞ」

どういう意味…?
マミヤが確認しようとすると。

次の瞬間、己の唇が塞がれた。
いつの間にかまわった腕に腰を引き寄せられ、
首筋に唇があてられる。
自分の抵抗を軽々と抑えたレイは、マミヤを抱えて寝室に直行した。




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