マミヤの子育て日記 Vol XXX
世紀末xxxx年6月3日
昨日までの雨が嘘のように良い天気。
目の前に広がるは青い空。
太陽が輝いている。
レオはというと、ここ数日の雨で外に出れなかった反動か
早くから飛び出して長老を連れまわしては、あたりを走り回っている。
本当に元気な子…。
ああ、でもそんなに走っちゃあ。
また長老が腰を痛めないか心配だわ。
レイの死から7年が経っていた。
レオはもうすぐ6歳となる。
まだ言いようの無い悲しみと喪失感は私を襲うこともあるけれど
両親が死んだとき、コウが殺された時とは違う。
心優しい義妹アイリ、めっきり背が伸びて生意気になったバット、
相変わらずしっかりもののリンちゃん、長老、村人たち…
そして何より、レオがいる。
彼の忘れ形見。私の宝物。
レオ。
先日アイリからも言われた言葉。
「レオは兄さんの小さいころにそっくりだわ」
本当に。
レイの面差しを確かに受け継いでいるわが子に
ふとした瞬間驚かされることも多々ある。
そしてそれは外見だけではなく、内面もで。
先日バットとリンちゃんがやってきた時。
父親の話をねだり、聞き終わってから言った台詞。
「僕も強くなる。パパみたいにきっと強くなる。
強くなって、ママをずーと守ってあげるんだ。
ママが悲しい思いをしないように助けてあげるんだ。
それにアイリおねえちゃんや、おじいちゃん(長老)。
隣のガダガおじちゃんやシーンおばちゃん。
リペタやガイキ、トルーにペータ(全て友達の名前)、
みんなみーんなを守ってあげるんだ!!
あ、後ペルも!!」
一生懸命自分の大切な人を列挙しながら
そんなことを言うわが子の姿に思わず涙が出たものだ。
その日から修行とやらをはじめたレオ。
走ったり飛び跳ねたり手を振り回したり。
遊んでるとしか思えないが、本人はいたって大真面目。
幼いながら、少年は決意したのだ。
将来、母を、叔母を、そして大切な人を守る為に。
強くなるのだ、と。
そして今も、村はずれで一心不乱に型をとっている。
バットに基本を教わっただけだが、さすがレイと自分の子供。
母親が言うのはなんだけど筋はいい。
レイ、天国で見ている?
私は今とても幸せよ。
貴方の息子も貴方にとってもよく似ているわ。
本当に似ているわ。
貴方がまるでいるみたいよ。
雲ひとつ無い空を見上げて感傷に浸るマミヤ。
そこに
「きゃあああああー」
突然上がった少女の悲鳴。
慌てて目線を戻すと、レオとその友達トルーの姿が。
トルーはスカートを抑えて真っ赤になっている。
レオはというと
やったぜ、とばかりにあげていた腕を下ろしつつ、
私の姿に気がついたのか、くるりと踵を返し、こちらに小走りで近づいてくる。
「ママ、みてた?今までで一番上手に決まったんだよ!!
名づけて『南斗水鳥拳奥義 伝衝烈波 スカートめくりの術!!』
トルーのパンツは今日は白だったよ!!!」
わが子が嬉しそうに報告するその内容に、軽いめまいを感じる。
スカートめくりの術って何?
今日はって?
今までってどういうこと?
(伝衝烈波がレイではなくユダの技だという突っ込みは後回し。)
そんな母の動揺に気づかず、最愛の息子は言葉を続ける。
「あのねあのね。、
リペタはイチゴ模様だったしー。リュウナはオレンジ色。
サキは黄色で、カイは青色だったよ。
後アイリおねえちゃんは、昨日はピンクだったけど。
今日はわかんないや、まだ試してないし。」
どこか誇らしげに、嬉々として修行の成果を語るレオ。
思わず頭を抱え込む。
その後手を天に伸ばし、
もう一度空を見上げる。
蒼天の空を。
レイ、天国で見ている?
私は今とても幸せよ。
貴方の息子も貴方にとってもよく似ているわ。
本当に似ているわ。
貴方がまるでいるみたいよ。
でもあんなところは似せなくて良いから!!!
ご丁寧に貴方のセクハラをDNAに残さなくて良いから!!!
本当に勘弁して!!!
目を向けると得意げな息子の顔。
今後の教育方針を再考しつつ、
マミヤはため息をついた。