オ☆マ☆ケ
怪我の手当も一段落し。
彼の腕の中で、半ばまどろんでた私の耳に。
「あ・・・」
レイの呟きが飛び込んできた。
「どうしたの?」
「いや、なんでもない」
でも。視線泳いでるわよ、レイ?
「大丈夫?体が辛いの?」
「心配するな。なにも問題ない」
でも。ソワソワしてるわよ、レイ?
「なにか変よ。本当に大丈夫?無理してるんじゃ・・・?」
「無理なんかしてない。気にするな」
でも。なんだか見てて変よ、レイ?
じ〜〜〜〜〜〜
問い詰めるような私の視線を感じたのか。
ふぅ。
レイはため息ひとつ吐き出すと。
「すまん。マミヤ、少し・・・」
と立ち上がった。
心配そうに見上げる私に、
『大丈夫だ。心配するな』と言わんばかりに優しく微笑み、
その場から離れだすレイ。
ああ、やっぱり。
もっと早くに気づくべきだったわ。
本来なら絶対安静でないといけない筈なのに。
それを私なんかを助けるためにここ迄来てくれて。
今まで、襲い来る傷みを黙って耐えていたのね。
恐らく。
あの時みたいに。
苦しむ姿は私には見せられないと、見せたくないと。
私の目の届かぬところで、一人苦痛に耐えるつもりなのね・・・。
なんて、なんて人・・・・。
強く、誇り高く、そして優しい・・・。
彼の強さが、誇り高さが、優しい気持ちが。
どうしようもなくいとおしく、そして悲しくて・・。
ありがとう、レイ。
ごめんなさい、レイ。
こんな私を愛してくれて。
貴方の愛を受ける資格なんて無いのに。
震えだした身体を必死で押さえ込み。
固く、固く目をつぶった。
「まだ分からんのか」
え?この声は・・・。
「今のが北斗神拳だ」
あれ?レイ、よね・・・。
「え〜〜〜〜〜〜!!」
この太い声は。あの犬オヤジの・・・。
目を開ければ。
慌てふためく犬オヤジ。
たくましい眉毛を微動だにせず、立ちすくむケン。
そして。
レイの姿が・・・。
レイ?
なんでそこにいるの?
そこで何してるの?
傷が痛んだんじゃなかったっけ?
それで、どっか離れた場所で、
ガクガクガク〜。
うあああ〜!!ってな感じで
海老反り になってたんじゃないの?
胸は押さえてるものの、平然とした態のレイ。
なんで?どうして?
痛みが襲ってきたから私の元を離れたんじゃなかったの?
全然元気そうなのは良かったけど、じゃあ何のために・・・?
?を飛ばす私を尻目に、当の本人はというと・・・。
ボコボコにされた犬オヤジとフツーな感じで会話してる。
「そ、それじゃあ、あの拳王と五分の闘いをやったのは・・・」
「ヤツだ」
間髪いれず突っ込むレイ。
「戦う前に分かるべきだった」
同じく即答するケン。
・・・なんか、二人ともテンポ良くない?
「も・・・もしかして、もしかして〜。お・・・おれは〜!!」
「うむ死んでいる。」
・・・
レイ。
なんだかとっても楽しそうね。
凄く嬉しそうな顔してるわよ・・・?
それって、私の気のせい?
「フッ、いい友だな・・・(ニタリ)」
・・・!!!
気のせいじゃない!!!
絶対気のせいなんかじゃない!!!
明らかに楽しんでる!!!!
飛び散る肉片をバックに、
満足そうな微笑を浮かべつつ、レイは私の方へと足を動かした・・・。
「大丈夫か・・・」
私を再び抱き起こすレイ。
先ほどのシニカルな表情はどこ行ったのか。
突然シリアスモードに早変わり。
いや、急にそんな熱い瞳を向けられても困るんだけど。
つーか、レイ。
結局、貴方何しに行ったの?
ナレーター?
解説?
ツッコミ?
もしかして、レイの中では。
私(一応怪我人)<闘いの解説?
恐ろしい図式に頭がパニックを起こし・・・。
「え、ええ・・・助かったわ。」
彼の問いに。
そう答えるのが精一杯だった。