who would have thought the old man to have so much blood in him?








Macbeth
by W. Shakespeare


Vol.2 トキ










「遅かったか・・・・」




忌まわしい知らせを聞き、全力で向った修練所






そこには兄の姿は無く












大量の血と共に



養父の

無残な屍が横たわっていた・・・

























むせ返る血の匂い・・




















私は一人

物言わぬ屍を前にして、









暫しの間








ただ。ただ・・・・・・・・・・














震えているだけだった・・・・・。









親とはぐれてしまった子供のように





















Blood 











皆私を『聖人』と呼ぶが・・・・

それは大きな誤解だ。



私とて人を憎むこともある。殺したいと思うこともある。















リュウケン。わが養父、我が師・・・・・・。





























過酷な修行中。


憎まなかった訳ではない
殺してやりたいと思ったこともある。






傷の痛みで眠ることさえ叶わなかったあの修行の日々
鍛錬で息も絶え絶えになった兄を、泣きながら必死で看病した夜
「使い物にならん」その一言で弟弟子をあっさりと切り捨たあの時






「絶対に殺してやる!!いつか、必ず!!!」


そう誓ったこともあった・・・・。








しかし・・・。











師の遺体を清める手を止め思う。


この人の身体はこんなに小さかっただろうか・・・。
幼き頃、恐怖を感じたあの人は
こんな老人だったであろうか・・・・。





















不思議なことにあれほど感じていた




怒りも、憎しみも












今は無く。














そして、




哀しみさえ残ってなかった。














壊れた柱を補強し、床を拭い、壁を拭いて。
汚れを落としても。綺麗にしても。全てを清めても。
全てを無かったことにしようとしても。








血の匂いは依然として消えぬまま。

無形の槍となって私を攻め続ける。








































元には戻らないのだ。










決して。















もう・・・


元には・・・。
以前には・・・・。
昔には・・・・・・・・・。






戻れない・・・。



























戻れぬならば、




なおせぬならば、


















もう





もう









二度と



















振り返りはしない。

















決意は定まった。



















ラオウを、わが兄を止める!!!






私の手で。




















父よ・・・。

貴方の敵を討つなどというつもりは毛頭ない










私はただ


あの幼き日の兄との約束




それを果たすために
















修羅の道を歩みましょう。










もう元には戻れないのだから。


この道を。

後ろを振り返ることなく。進みましょう。























の繋がりも無い養父の遺体に軽く一礼すると






己が定められた道へと歩き出した。







決して振り返ることなく。









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