12月31日 大晦日の光景 アイリ&トキ
「今年もあと僅かですね」
「ああ、そうだな」
年越し蕎麦も食べ終えた二人は、
熱いお茶を飲みながら今年一年を静かに振り返った。
「今年も色々なことがありましたね」
「ああ、レイも遂にマミヤさんと結婚式を挙げて」
「マミヤさんのウィエディングドレス姿はとても綺麗で。
付き添いの長老もあんなに泣かれて・・・・・・」
「あの時は大変だったな・・・・・・・・」
トキの脳裏に浮かぶあの時の光景。
「ワシが手塩にかけた娘をーーーー!!
どこの馬の骨とも分からぬあんな青二才にー!!!!!!」
花婿をつかまえて「馬の骨」呼ばわりする長老。
いつまで経っても花嫁を花婿に渡そうとせず・・・。
あの老人を花嫁から引き剥がすのに己もケンシロウも苦労したものだ・・・。
最も一番泡くってたのは花婿だったことは言うまでもない。
「あの時のレイは見ものだったな」
脳裏に浮かぶな顔。今でも笑える。
「そんな意地悪を言って・・・。兄さんも結婚式で緊張していたのよ」
(100%違う)
そう思いつつも、賢明な彼はそれ以上続けなかった。
「素晴らしかったわ、あの結婚式は。ふふっ」
幸せそうに微笑むアイリ。
その姿にどうしようもなく愛おしさがこみ上げ、
トキは彼女の手を引き、その身体を優しく抱きしめた。
「トキ?」
突然の出来事に少し慌てるアイリ。
顔を上げるとトキの穏やかで優しい目。
「アイリ。今年も様々なことがあった」
「・・・はい」
「楽しいこと、嬉しいこと。」
「はい」
「そして悲しいこと、辛いことも多くあった」
「はい」
「来年も様々なことがあるだろう。
嬉しいこと、幸せなことだけでなく、辛いこと、悲しいことも」
「はい」
「それでも、貴方となら。貴方と一緒なら。
これからを過ごしていけると思う。いや過ごしていきたい」
「・・・・・・はい。私も。貴方となら・・・・」
遠くから鐘の音が微かに聞こえた。
「年が、明けたかな?」
「そのようですね」
少し惜しいと思いつつ、胸の中のぬくもりを離す。
「トキ、これからもよろしくお願いしますね」
花のような微笑を向けるアイリに、ゆっくりと頷いた。
「ああ。これからも、よろしく。アイリ」